日本酒の作り方は、ワインやビールとは全く違う独特の製法で造られています。
その最大の特徴は「並行複発酵」という、世界でも珍しい発酵方法にあります。
この記事では、日本酒の作り方について、基本的な仕組みから実際の製造工程まで詳しく解説していきます。
日本酒の作り方
日本酒の作り方は、実はとてもシンプルな原理に基づいています。
基本となる材料は米、水、麹、そして酵母の4つだけ。でも、この組み合わせから生まれる味わいは実に多彩です。
日本酒ができる仕組み
日本酒の作り方で最も特徴的なのは「並行複発酵」という発酵方法です。
これは、デンプンを糖に変える作業と、糖をアルコールに変える作業が同時に進む仕組みのこと。世界でも珍しい醸造方法なんですよ。
まず、麹菌が米のデンプンを糖に分解し、その糖を酵母がアルコールに変えていきます。
この2つの作業が一つのタンクの中で同時進行するため、アルコール度数を20度近くまで上げることができるのです。
温度管理も日本酒の作り方では重要なポイント。発酵温度は6~18度と低めに保たれ、じっくりと時間をかけて醸造されます。
他のお酒との製造工程の違いを比較
日本酒の作り方は、ビールやワインとは大きく異なります。
それぞれの違いを表にまとめてみました。
お酒の種類 | 原料 | 発酵方法 | アルコール度数 |
---|---|---|---|
日本酒 | 米・水・麹・酵母 | 並行複発酵 | 15~20度 |
ワイン | ぶどう | 単発酵 | 10~14度 |
ビール | 麦芽・ホップ | 単行複発酵 | 4~6度 |
ワインは、ぶどうに含まれる糖分をそのまま発酵させる「単発酵」という方法で造られます。
一方、ビールは麦芽の糖化と発酵を別々に行う「単行複発酵」。日本酒だけが糖化と発酵を同時に進める特殊な製法を採用しているのです。
この違いが、それぞれのお酒の味わいや香り、アルコール度数の差を生み出しています。
日本酒の製造工程を詳しく紹介
日本酒の作り方には、10の基本工程があります。
それぞれの工程で職人の技術と経験が生かされ、美味しい日本酒が生まれるのです。
①精米・蒸米
日本酒の作り方は、まず米を磨くことから始まります。
玄米の表面には脂肪やたんぱく質が多く含まれており、これらは雑味の原因になるため削り取ります。
精米歩合によって日本酒の種類が決まり、大吟醸なら50%以下まで削ります。
精米にかかる時間は、精米歩合60%で約10時間、50%なら24時間以上も必要です。
削りすぎると米が割れてしまうため、温度管理をしながら慎重に作業を進めていきます。
②洗米・浸漬(しんせき)
精米した米は、表面についた糠(ぬか)を洗い流す必要があります。
洗米は素早く行うのがポイント。時間をかけすぎると米が水を吸いすぎてしまうからです。
次に浸漬という工程で、米に適量の水を吸わせます。
吸水率は通常25~30%程度に調整し、秒単位で管理する蔵もあるほど繊細な作業です。
水温や米の品種、精米歩合によって浸漬時間を変える必要があり、杜氏の経験が問われる工程といえるでしょう。
③蒸米・放冷
適度に水を吸った米を、今度は蒸していきます。
蒸し時間は約40~60分。外側は硬く、内側は柔らかい「外硬内軟」の状態を目指します。
蒸しあがった米は、用途によって温度を変えて冷まします。
用途 | 冷却温度 | 使用割合 |
---|---|---|
麹米 | 30~35度 | 全体の20% |
酒母用 | 10~15度 | 全体の7% |
掛米 | 5~10度 | 全体の73% |
この温度管理が、その後の発酵に大きく影響するため、細心の注意を払って作業します。
④麹造り
麹造りは日本酒の作り方の中でも、特に重要な工程です。
蒸した米に麹菌をふりかけ、温度と湿度を管理しながら約48時間かけて育てていきます。
麹室(こうじむろ)と呼ばれる専用の部屋で、30度前後の温度を保ちながら作業を進めます。
麹菌が米のデンプンを糖に変える力を最大限に引き出すため、6時間ごとに手入れを行います。
完成した麹は栗のような香りがして、噛むとほんのり甘みを感じるのが特徴です。
⑤酒母(酛)造り
酒母は、アルコール発酵を行う酵母を大量に培養したものです。
水、麹、蒸米に酵母を加えて、約2週間かけて育てていきます。
酒母の作り方には「速醸系」と「生酛系」の2種類があります。
- 速醸系:乳酸を添加して約14日で完成
- 生酛系:自然の乳酸菌を利用して約30日で完成
酒母は日本酒全体の約7%しか使いませんが、味の方向性を決める大切な要素になります。
⑥醪(もろみ)・段仕込み
いよいよ本格的な仕込みの段階に入ります。
醪造りでは、酒母に麹、蒸米、水を3回に分けて加える「三段仕込み」を行います。
仕込み | 日数 | 特徴 |
---|---|---|
初添(はつぞえ) | 1日目 | 少量の材料を加える |
踊り | 2日目 | 酵母を増殖させるため休み |
仲添(なかぞえ) | 3日目 | 初添の約2倍の材料を加える |
留添(とめぞえ) | 4日目 | 仲添の約2倍の材料を加える |
段階的に仕込むことで、酵母が弱まることなく健全な発酵が進みます。
その後20~30日間、温度管理をしながら発酵させ、アルコール度数18~20度まで高めていきます。
⑦上槽(じょうそう)
発酵が終わった醪を搾って、酒と酒粕に分ける工程です。
搾り方には主に3つの方法があり、それぞれ味わいが変わってきます。
- ヤブタ式:機械で圧力をかけて搾る一般的な方法
- 槽搾り:昔ながらの木槽で自然の重みで搾る
- 袋吊り:布袋に入れて吊るし、雫を集める贅沢な方法
搾りたての日本酒は「荒走り」「中取り」「責め」と呼ばれ、それぞれ違った味わいが楽しめます。
この段階で初めて、透明な日本酒の姿が現れるのです。
⑧濾過・火入れ
搾った日本酒には、まだ細かい滓(おり)が残っています。
これを取り除くために濾過を行いますが、あえて濾過しない「無濾過」という選択もあります。
火入れは、60~65度で加熱殺菌する工程です。
酵素の働きを止めて品質を安定させるため、ほとんどの日本酒で行われる重要な作業です。
ただし「生酒」は火入れをしないため、フレッシュな味わいが楽しめます。生酒は要冷蔵で、早めに飲み切る必要があります。
⑨貯蔵・調合・割水
火入れした日本酒は、タンクで数か月から1年ほど熟成させます。
熟成期間中に味がまろやかになり、香りも落ち着いてきます。
その後、複数のタンクの酒を調合して味を整えます。
割水では、アルコール度数を15~16度に調整しますが、原酒はこの工程を行いません。
杜氏の腕の見せ所で、理想の味に仕上げていく大切な工程といえるでしょう。
⑩火入れ・瓶詰め
出荷前に、もう一度火入れを行います。
2回目の火入れは、瓶詰め後の品質を保つために欠かせません。
瓶詰めの方法も、味わいに影響を与える要素の一つです。
瓶燗火入れという方法なら、瓶に詰めてから加熱するため、よりフレッシュな味わいが保てます。
こうして約3~4か月かけて、ようやく日本酒が完成します。一つ一つの工程に職人の技と想いが込められているんですね。
日本酒の作り方や工程で味は変わる
日本酒の作り方を少し変えるだけで、まったく違う味わいの酒が生まれます。
ここでは、特徴的な製法で造られる日本酒を紹介しましょう。
蔵で貯蔵されずに出荷される「新酒」
新酒は、搾ってから貯蔵期間を置かずにすぐ出荷される日本酒です。
毎年11月から3月頃に出回り、フレッシュで華やかな香りが特徴的。
搾りたての新酒は、ピチピチとした微発泡感が残っていることもあり、まるで生きているような味わいです。
熟成による落ち着きはありませんが、その分、米の旨みをダイレクトに感じられます。
新酒の時期だけの限定品として、多くの蔵元が特別なラベルで販売しています。
割水をしない濃醇な味わいが特徴の「原酒」
原酒は、搾った後に水を加えない日本酒のことです。
通常の日本酒はアルコール度数を15~16度に調整しますが、原酒は18~20度とかなり高め。
水で薄めていない分、米の旨みや甘みがギュッと凝縮された濃厚な味わいが楽しめます。
ロックで飲んだり、水割りにしたりと、自分好みの濃さに調整できるのも原酒の魅力です。
最近では、アルコール度数を抑えた「低アルコール原酒」も登場し、飲みやすさと濃厚さを両立させた商品も増えています。
よくある質問
日本酒の作り方について、よく寄せられる質問をまとめました。
初心者の方が疑問に思うポイントを中心に、分かりやすくお答えします。
日本酒の作り方を自宅で簡単に実践することはできますか?
残念ながら、自宅での日本酒造りは法律で禁止されています。酒税法により、アルコール度数1%以上の酒類を無許可で製造することはできません。
ただし、酒蔵見学や体験教室に参加すれば、プロの指導のもとで日本酒造りの一部を体験できます。
日本酒の作り方にはどのような種類がありますか?
酒母の作り方で「速醸系」と「生酛系」に分かれ、それぞれ味わいが異なります。
また、精米歩合によって「大吟醸」「吟醸」「純米酒」「本醸造」などに分類され、精米歩合が低いほど雑味が少なく、華やかな香りの日本酒になります。
日本酒の作り方で使用する酵母について教えてください。
日本酒造りには「きょうかい酵母」と呼ばれる優良酵母が主に使われます。
7号、9号、14号などの番号がついており、それぞれ香りや味わいの特徴が異なるため、目指す酒質に合わせて選びます。最近では各蔵元が独自に開発した酵母も増えています。
日本酒の作り方を英語で説明する際の表現を教えてください。
日本酒は「Sake」または「Japanese rice wine」と表現します。
製造工程は「brewing process」、精米は「rice polishing」、麹は「koji」、並行複発酵は「multiple parallel fermentation」と説明すると伝わりやすいでしょう。
日本酒の作り方の違いによって味はどう変わりますか?
精米歩合が低いほど軽やかで華やかに、高いほど米の旨みが強くなります。
発酵温度を低くすると香り高く、生酛造りなら乳酸菌由来の複雑な味わいが生まれ、火入れをしない生酒はフレッシュな味わいになります。
日本酒の作り方の全工程にかかる期間はどのくらいですか?
精米から出荷まで、通常3~4か月かかります。
内訳は、精米と麹造りで約1週間、酒母造りで2週間、醪の発酵で約1か月、その後の貯蔵期間が1~2か月程度です。ただし、熟成期間を長くとる場合は1年以上かかることもあります。