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生酛(きもと)とはどのような日本酒?美味しい飲み方も紹介

生酛(きもと)とは、江戸時代から続く伝統的な日本酒の製法です。

現代では全体の約1%しか造られていない希少な製法ですが、その独特の旨味とコクは多くの日本酒ファンを魅了しています。

通常の日本酒造りでは人工的に乳酸を添加しますが、生酛では自然の乳酸菌の力を借りて酒母を育てます。

実は生酛で造られた日本酒は、燗にすると驚くほどまろやかになり、料理との相性も抜群です。

この記事では、生酛とは何か、その特徴や楽しみ方について詳しく解説していきます。

目次

生酛とは?

生酛(きもと)とは、江戸時代から受け継がれてきた日本酒造りの伝統技法のひとつです。

現在主流の速醸系酒母では人工的に乳酸を加えますが、生酛では自然界の乳酸菌を活用して酒母を育てていきます。

手間と時間をかけて造られる生酛の日本酒は、しっかりとした旨味と奥深いコクが特徴で、燗にすると味わいが一層引き立ちます。

乳酸を添加しない伝統的な酒母造り

生酛造りの最大の特徴は、乳酸を人工的に加えない点にあります。

通常の日本酒造りでは、雑菌の繁殖を防ぐために醸造用の乳酸を添加しますが、生酛では蔵に住み着いている天然の乳酸菌が自然に乳酸を生成するのを待ちます。

この工程では「山卸し(やまおろし)」という、蒸し米と麹を櫂(かい)ですりつぶす作業を行います。

米をすりつぶすことで糖化を促進し、乳酸菌が活動しやすい環境を整えるのです。

項目生酛造り速醸系酒母
乳酸の添加天然の乳酸菌を活用人工的に乳酸を添加
製造期間約30日約14日
山卸し作業必要不要
味わい複雑で深みのある味すっきりとした味

生酛造りは手間がかかるため、現在では日本酒全体の約1%程度しか造られていません。

劣化しにくく品質の安定性がある

生酛で造られた日本酒は、長期保存に向いているという大きなメリットがあります。

時間をかけて育てられた酒母は、さまざまな微生物が複雑に作用し合い、腐敗菌に対する抵抗力が強くなるのが特徴です。

また、生酛の酒は熟成によって味わいが向上することも知られています。

新酒のときは少し硬さを感じることもありますが、半年から1年ほど寝かせると、角が取れてまろやかな味わいに変化していきます。

温度変化にも強いため、常温保存でも品質が保たれやすいのも魅力のひとつでしょう。

このような安定性の高さから、生酛の日本酒は贈り物や長期保存用としても選ばれることが多くなっています。

生酛の楽しみ方

生酛の日本酒は、温度帯によって表情を大きく変える魅力的なお酒です。

冷やして飲むとキリッとした酸味が際立ちますが、40~50度のぬる燗にすると、隠れていた旨味が花開き、まろやかな味わいに変化します

特に寒い季節には、じっくり温めた生酛の燗酒がおすすめです。

複雑な味わいの層が重なり合い、飲むほどに深みを感じられるでしょう。

温度帯温度味わいの特徴
冷酒5~10度キレのある酸味、さっぱりとした口当たり
常温15~20度バランスの良い味わい、米の旨味を感じる
ぬる燗40~45度まろやかな口当たり、旨味とコクが際立つ
熱燗50~55度力強い味わい、余韻が長く続く

料理との相性も抜群で、味の濃い煮物や焼き魚、チーズなどの発酵食品とよく合います。

生酛特有の乳酸由来の酸味が、油っぽい料理の後味をさっぱりとさせてくれるため、天ぷらや唐揚げとの組み合わせも楽しめるでしょう。

生酛造りの日本酒の保存方法

生酛の日本酒は保存性が高いとはいえ、正しい方法で保管することが大切です。

直射日光を避けて、涼しい場所で保管するのが基本となります。理想的な保存温度は5~15度ですが、温度変化が少ない場所であれば常温保存も可能でしょう。

開栓後は空気に触れることで酸化が進むため、なるべく早めに飲み切ることをおすすめします。

ただし生酛の場合、開栓後も他の日本酒より味の変化を楽しめるのが特徴です。

冷蔵庫で保管すれば、2~3週間は美味しく飲めるでしょう。

  • 縦置きで保管し、コルクや栓の乾燥を防ぐ
  • 新聞紙などで包んで光を遮断する
  • 振動の少ない場所を選ぶ
  • においの強いものと一緒に置かない

長期熟成を楽しみたい方は、セラーや冷暗所での保管がおすすめです。

生酛は時間とともに味が丸くなり、より深みのある味わいへと変化していきます。

よくある質問

生酛に関してよく寄せられる質問をまとめました。購入や飲み方の参考にしてください。

生酛と日本酒の通常の製法の違いは何ですか?

最も大きな違いは乳酸の作り方です。

通常の速醸系では人工的に乳酸を添加しますが、生酛では自然の乳酸菌によって乳酸を生成します。

そのため生酛は約30日かかり、通常の製法の2倍以上の時間が必要となります。

生酛造りの日本酒はどんな味わいになりますか?

しっかりとした旨味とコク、複雑で奥深い味わいが特徴です。

乳酸由来の心地よい酸味もあり、燗にするとまろやかさが増します。

速醸系のすっきりした味わいとは対照的に、飲みごたえのある力強い味となります。

生酛の酒を美味しく飲む温度を教えてください。

40~50度のぬる燗から熱燗がおすすめです。

温めることで生酛特有の旨味とコクが引き立ち、より深い味わいを楽しめます。

冷やでも楽しめますが、温度を上げることで本来の魅力が発揮されるでしょう。

生酛造りにはどのくらいの期間がかかりますか?

酒母造りだけで約30日かかります。

速醸系が約14日なので、倍以上の期間が必要です。

その後の醪(もろみ)工程も含めると、完成まで2~3ヶ月程度かかることが一般的でしょう。

生酛の日本酒はどんな料理と合いますか?

煮物や焼き魚、チーズなどの発酵食品と相性抜群です。

生酛の酸味が油っぽい料理をさっぱりさせるため、天ぷらや唐揚げにも合います。

しっかりした味わいなので、味の濃い料理と合わせても負けることがありません。

生酛造りと山廃仕込みは現在どのくらい造られていますか?

生酛と山廃を合わせても、日本酒全体の約1~2%程度しか造られていません。

手間と時間がかかるため、限られた蔵元でのみ製造されています。

希少性が高く、日本酒好きの間では貴重な存在として人気があります。

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